GPSチップアンテナの実験I

2011/07/07

GPS RF 製作 設計

現在作製している電装系の基板には、GPSモジュールは搭載されていますが、GPSアンテナは外付けになっています。
人力飛行機に載せる場合、基板の周りが完全にシールドされて電波が入らないということは考えにくいので、GPSアンテナは基板に載せてしまうことも可能です。

そこで、SparkFunで取り扱いのあるGPSチップアンテナが受信に使えるかどうかをテストしてみることにしました。
同じような実験はFenrirさんがすでに行っていますが今回使用したアンテナとは別なものの結果です。

GPS衛星から送られてくる信号の周波数は1575.42MHz(L1)でマイクロ波の領域に入ります。
マイクロ波の領域になると、アンテナとコネクタを載せる基板の設計によっても性能に大きな違いが出るので、まずはチップアンテナのデータシートを参考に基板の設計を行いました。
作製したのは、アンテナとSMAコネクタだけが載るシンプルな基板です。
データシートにあるとおり、アンテナとコネクタはGND付きコプレーナ線路でつなぎました。
コプレーナ線路を含むマイクロ波線路については、以下の書籍に理論も含め詳しい情報があります。
K. C. Gupta, Ramesh Grag, and I. J. Bahl. Microstrip Lines and Slotlines. Artech House, 1979

この本にある計算式から線路のインピーダンスを求めてもよいのですが、楕円積分が登場する少し面倒な計算が必要になります。
(余談ですが、楕円積分の値はCASIOの高精度計算サイトで求めることができます)
いくつかの無料のツールでこの計算を簡単に行えるのですが、たとえば
  1. マイクロ波回路シミュレータAnsoft Designer SVに付属のストリップライン計算ツール(現在は配布されていない模様)
  2. Agilent AppCad
  3. モーメント法マイクロ波シミュレータSonnet Liteによる断面形状からの数値計算(ただし、コプレーナ線路の計算には注意が必要)
  4. I-Laboratoryオンライン計算ツール
等があります。
今回は、最も簡単に利用できる4で計算を行いました。
このツールでの計算では、楕円積分を近似式で置き換えていますが、実用上十分な精度が得られます。

このツールを使って50Ωのコプレーナ線路を設計し、製作した基板が下の写真です。
製作したGPSチップアンテナのテスト基板
サンハヤトのガラスエポキシ片面基板をエッチングしコプレーナ線路を作り、裏面には銅箔テープを貼ってグラウンドにしています。
また、基板の端にも銅箔テープを貼り、裏表のグラウンドを接続しています。
さらに、コプレーナ線路の放射ロスの原因となるスロットモードの抑制のために、線路と平行に波長より十分短い間隔でビアを打ってあります。

この基板にアンテナを取り付け、ネットワークアナライザでその特性を測ってみました。
基板の話がかなり長くなってしまったので、測定結果は次回の記事に書きたいと思います。