JAXA小型低乱風洞によるエアデータセンサの校正1

2015/04/29

センサ

有限会社オリンポスさんの協力のもと、JAXA小型低乱風洞でエアデータセンサの校正を行いました。

校正作業を行ったのは、
の3つのセンサです。
試験は風車式2台とピトー管の2回に分けて行いました。
データが多く、記事が長くなりそうなので何度かに分けてまとめます。

まずは測定に使用した機器や風洞の特性についてです。

試験では、風洞備え付けのピトー管につながる圧力センサ出力をHPA_Navi IIのアナログ入力に接続することで、風洞の流速に対応する差圧を25 Hzの時系列データとして取得しました。
下の2つの図に測定結果を示します。
風車式対気速度計の測定を行った際の流速の時間変化。上の図にある流速ごとの電圧の値は平均値と標準偏差。下の図は時系列データをフーリエ変換して周波数の関数として示したもの
ピトー管の測定を行った際の流速の時間変化。上の図にある流速ごとの電圧の値は平均値と標準偏差。下の図は時系列データをフーリエ変換して周波数の関数として示したもの
風洞の流速によってゆらぎの大きさが異なることがわかります。
特に10から15 m/sではゆらぎが大きく、その周波数は10.5 Hz程度です。
このことから、特に測定値の安定しない10から15 m/s付近では測定中にデータを1点取るだけでは正確な値が取得できず、ある程度長い時間測定を行ってその平均値を取得しないと正しい測定値が得られないことがわかります。

風洞備え付けのピトー管の差圧指示値とHPA_Navi IIで取得した時系列データの平均値を比較したものが下のグラフです。
備え付けの圧力計の指示値とHPA_Navi IIによる測定値の関係。凡例にはフィッテイングにより求めた傾き、切片およびそれらの95 %信頼区間の幅を示した。下の図は両者の差分を圧力計の指示値の関数としてプロットしたもの
フィッティングから求めた傾き、切片とそれら95 %信頼区間の幅から、
  • HPA_Navi IIの出力には一定のオフセットがある
  • オフセットを除いてはHPA_Navi IIは正しい値を出力している
ことがわかります。
今後の測定ではこのオフセットの値を測定値から差し引いて流速を求めます。

風洞備え付けのピトー管で測定した差圧から流速を求めるには空気密度の値が必要ですが、大気に含まれる水蒸気の量は無視し大気圧と温度の測定値から計算で求めました。
ここで使う大気圧や温度には風洞室備え付けのマノメータや温度計から読み取った値を用いました。
測定中の大気圧や温度は時間変化しますが、その様子はHPA_Navi IIのオンボード気圧計・温度計の値からどの程度の変化であったかを推測し、その影響を評価しています。

以上により風洞のおおまかな特性とデータ解析時の注意点がわかりました。
次回の記事では風車式対気速度計の校正結果についてまとめる予定です。