Kinematic GPSによる飛行軌跡の解析

2012/01/15

GPS 運用

現在運用している電装系にはu-bloxLEA-6Tというちょっと高級なGPSを採用しています。
わざわざこんなGPSを使うのはKinematic GPSという方法を使って精度の高い飛行経路を求めたいためです。
Google Earthによる解析データの表示例。ピンク色が通常のGPSによる、オレンジ・緑色がKinematic GPSによる飛行軌跡。通常のGPSではわからなかったS字飛行の様子がKinematic GPSではわかる
備忘録を兼ねてこのGPSから吐き出されるデータを使って飛行軌跡を求めるまでの流れを書いておこうと思います。
解析は以下のような流れで行います。
  1. ログの取得
  2. ログの変換
  3. 電子基準点での観測値のダウンロード
  4. 精密歴のダウンロード
  5. RTKLIBによる解析
  6. データの表示
1. ログの取得
当然のことながら解析するためのログデータが必要です。
使用する解析ソフトRTKLIBの都合があるのでGPS受信機は対応リストの中から選びます。
必要なのは搬送波位相等のいわゆる生データです。
u-blox製GPSの場合、GPSモジュールの評価ソフトウエアu-centerやマイコンからのコマンド送信でRXM-RAWの出力を有効にして生データを取得します。
u-centerを使ったGPSモジュールの設定

2. ログの変換
RTKLIBが読み込めるログデータはRINEXという形式なので取得したログのフォーマットを変換します。
u-blox製の受信機の場合、fenrirさんのブログで公開されている変換プログラムが使えます。
ブログのコメント欄で指摘しましたが、このソフトには若干バグが含まれているので、RTKLIBで読み込めるRINEXファイルを得るには出力ファイルを手で少しいじるか、ソースコードに修正を加える必要があります。

3. 電子基準点での観測値のダウンロード
最寄りの電子基準点での観測データをダウンロードします。
富士川滑空場の場合、最寄りの電子基準点は蒲原です。

4. 精密歴のダウンロード
GPS精密歴をダウンロードします。
発表される時期によって超速報(igu*****.sp3.z)、速報(igr*****.sp3.z)、最終(igs*****.sp3.z)の3つがありますが、遅い発表のものほど精度は高くなります。

5. RTKLIBによる解析
RTKLIBのRTKPOSTを使って解析を行います。
変換済みログデータ、精密歴、電子基準点での観測値を指定し解析します。
オプションの設定項目がたくさんありますが、最低でも
  • Kinematicモード (Setting1/Positioning Mode)
  • 精密歴を使用 (Setting1/Satellite Ephemeris Clock)
  • 電子基準点の座標 (Positions/Base Station)
を設定しておけばうまく解析できるはずです。
RTKPOSTのデータ指定例。obs/navファイルがログデータ、11oファイルが電子基準点の観測値、sp3ファイルが精密歴
RTKPOSTのオプション設定例
RTKPOSTのオプション設定例。蒲原の電子基準点の座標を選択した

6. データの表示
必要に応じて解析したデータを表示します。
表示にはRTKLIBのRTKPLOTやGoogle Earthが使えます。
Google Earthで使うkmlファイルは、RTKPOSTで生成できます。
RTKPLOTによる解析データの表示例。軌跡の他にも位置、速度、加速度等が表示できる
以上の手順を踏めば飛行軌跡が出てくるはずです。
少々高価なGPSモジュールを使う必要がありますが、それに見合った精度のデータが取れるので人力飛行機業界に広まることを期待しています。